先日の「セッション・マン」に続き、「Monterey Pop モンタレー・ポップ」&アフタートークを観に再び角川シネマ有楽町へ行ってきました!もちろんこちらもピーター・バラカンさん主催の音楽映画祭のプログラムの1つです。
「モンタレー国際ポップフェスティバル」
歴史的に有名な音楽フェスの1つ、1969年のウッドストック・フェスティバルより前1967年に行われていたのがこの「モンタレー・ポップ」です。
ロック・フォーク、ソウル、インド音楽と幅広いアーティストが参加、熱演しています。ライブ映像はもちろんのこと、この映画の特徴は観客の様子や開催前の会場内の様子をたくさん撮影しているのですがこれが当時の空気をそのまま感じるようなものになっています。カラフルで猥雑、うさんくさいほどのハッピームードが溢れ、会場を闊歩する若者はサイケファッション・インド風ファッションだったり、トラッドやミリタリーだったりそれぞれ思い思いにおしゃれをしています。車や風船、人の顔にぺたぺた鮮やかな花の絵を描いたり、会場でアクセサリーを売ったり、バナナをかじりながら野宿したり。文字で読むよりもこれぞあの時代なんだ~、と思わせてくれるような鮮明な映像が楽しめます。特にファッションとアートが好きな方はライブ以外の部分もめちゃくちゃ楽しめると思います。
(Oasisのネブワースはこれの90年代版みたいな演出がありますよね。どちらもスマホのない時代特有の雑さ・大雑把さ・よく言えばおおらかさが感じられます)
出演ミュージシャンとライブ映像について
ライブ部分は、順番などかなり編集されて1ミュージシャンにつき1~2曲となっています。
- ジャニス・ジョプリン ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー
「コンビネーション・オブ・ザ・トゥー」 - スコット・マッケンジー「花のサンフランシスコ」
- ママス&パパス
「クリーク・アレイ」「夢のカリフォルニア」 - キャンド・ヒート
「ローリン・アンド・タンブリン」 - サイモン&ガーファンクル「59番街橋の歌」
- ヒュー・マセケラ「バジャブラ・ボンケ」
- ジェファーソン・エアプレイン
「ハイ・フライング・バード」「トゥデイ」 - ジャニス・ジョプリン ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー
「ボール・アンド・チェイン」 - エリック・バードン&ジ・アニマルズ
「黒くぬれ!」 - ザ・フー「マイ・ジェネレーション」
- カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ「セクション43」
- オーティス・レディング「シェイク」「愛しすぎて」
- ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス「ワイルド・シング」
- ママス&パパス「感じるね」
- ラヴィ・シャンカール「ドゥン」
※以上のリストは公式サイトより引用
アメリカ、イギリスのミュージシャンがほとんどのようですがアフリカのトランペット奏者ヒュー・マセケラとインドのシタール奏者ラヴィ・シャンカールといった方も参加しているためかこの催しは正式には「『国際』ポップ音楽祭」という名前になっています。この中でロック再履修中の私でも知っていたのはジミ・ヘンドリックスのギター燃やしパフォーマンスと、The Whoが出演したということくらいでした。
しかし映画を観た後一番心にぐっさりと爪痕を残していたのはジャニス・ジョプリンのパフォーマンスでした。ほとんど彼女について知らずに観始めたのですが「とにかく伝えたい」というエネルギーに満ちたエモーショナルな歌唱で衝撃でした。
出番を楽しみにしていたThe Whoは「My Generation」1曲のみ収録、この時期はサイケファッションでまとめていました。破壊行為に恐れをなしたスタッフの撤収の早さが面白かった!個人的にジョン・エントウィッスルが全然映らないことが不満でした。
ニッキー・ホプキンスの映画「セッション・マン」でも名前が出ていたジェファーソン・エアプレイン、初めて彼らの姿を観ることもできました。力強い女性と男性のボーカル(映画公式サイトによると女性:グレイス・スリック、男性:マーティ・バリンとポール・カントナーのようです)のハーモニーが印象的でした!
トークショー
上映後のトークショーは映画・音楽評論・作家・DJと多岐に渡って活動されている志田一穂さんが登場。志田さんもピーター・バラカンさんも(私以外大多数の)観客の方も、この映画のあれが好き!あれが良かった!という愛情たっぷりというのが伝わってきました。
私はほぼ知識ゼロで鑑賞したので、モンタレーという街の話から興味津々でした。モンタレーはサンフランシスコの都市で、そこまで規模が大きい会場はないものの既に「モンタレー・ポップ」の前にジャズなどの音楽イベントは行われていたとのことです。音楽を楽しむ土壌がすでにあり割と自由な雰囲気の街なのでしょうか。そうはいっても、若者が三日間で20万人も集まるとあっては街の治安が心配です。映画の冒頭に保安官が登場し、少し緊張感があったことを思い出しました。寝泊まりは会場ではさせず、かといって宿泊施設も足りないため学校の校庭を開放し寝袋やテントで寝かせるといった措置をとったそうです。現代なら、テントサイトが初めから用意されたフェスや都市型フェスもありますが、こういった初期の試行錯誤の積み重ねが今の形につながっているんだなと感じます。
モンタレー・ポップはそもそも出演者のひとりの単独ライブだったところを、ママス&パパスのメンバーが大規模なフェスに展開させたというお話。当時のアメリカの音楽シーンでそうとう影響力、発言力を持っていただろうことをうかがわせます。
また、お二人によると今回の上映のリマスター版ではとても品質が向上し、美しい映像になっているということ。確かに、60年代の映像と知ってはいるものの大画面で観ると本当にあの極彩色の世界に自然と取り込まれるようで「古い映像を観ている」感覚がいつしか失せていたなあと思います。
小ネタとしてこんな話も。
・カメラマンが足りなくて適当に捕まえた人員にカメラを持たせて会場の様子を撮影させた
・メインのステージ撮影は撮影者(=監督?だったかも)の癖でアップばっかり
・ジミ・ヘンドリックスがオイルをいそいそ用意しているところが映っていて面白い
・ジミとThe Whoは出演順をめぐって揉めたためコイントスで決定した
・ステージ上にミュージシャン名やサイケデリックな映像を投影しているのが新しいが当時の映像制作集団によるもので、ガラスと油を使って独特の模様を作り出すのが流行した
・グレイトフル・デッドはモンタレーもウッドストックも出演しているのに、演奏に納得がいっていないことや曲が長すぎてテープが間に合わないなどの理由でどちらも作品として未収録になっている
・ジョージ・ハリスンとシタール奏者ラヴィ・シャンカールをつなぐきっかけになったのはモンタレー・ポップ
毎度のことですが自分の知識不足、メモの取り間違いなどあるかと思いますが気づき次第また修正しますのでご容赦ください。まだ9月18日(水)に音楽映画祭内で上映がありますので気になった方、この映画好きだから大スクリーンで観たい!という方はぜひ。
[…] 初夏にブログを書き始めてから、本当にたくさんのミュージシャンを知ることができて楽しい時間を過ごしています。あっという間に10月も終盤となりました。偶然にも好きになるミュージシャンがQUEENを筆頭にUKとその周辺出身が多かったためSNSのプロフィールなどでもUKロック好きを名乗ってましたが、映画「セッション・マン」「モンタレー・ポップ」、書籍「ルート66を聴く」の影響で気になったミュージシャン同士のつながりを辿ったりしていくうちに最近はUSロックにも手を出すようになりました(過去記事にリンクしています)。さらに「ルート66を聴く」著者の朝日順子さんがSNSで紹介してくださったことがきっかけで、ルート66についての紹介サイトがあることを知りました!2018年からオクラホマに在住されている日下部眞理子さんが運営するこちらのサイトは、実際に日下部さんが訪ねた場所やルート66にまつわるあらゆる情報を詳細に紹介していてとても興味深い記事がいっぱいです。実際に日々の生活を現地で送る方の発信する情報はリアルで、あらゆる角度から切り取られているので読み進めると疑似体験したような気分になれます! […]