先月、何年かぶりに渋谷駅に降り立ちました。道が複雑で人が多いため苦手意識がありほとんど行かないエリアですが、この展覧会を見るためになんとか奮起。
「薔薇のことづけ」。こちらはグラフィックデザイナーの秋田和徳さんがこれまでに手掛けた作品のうち、ロック・ミュージックに関わる作品を特にピックアップして展示したものです。HMV渋谷店内のBankrobber LABOというギャラリーで11月に行われました。企画制作は株式会社4TR!Xで告知してくださったのでこの素晴らしい作品展を見ることができました。
BUCK-TICK、黒夢、さらにデヴィッド・ボウイ、クーラ・シェイカーなど国内外ミュージシャンのCD、ポスター、書籍。それらのアートワークが壁いっぱいに飾られ、椅子や調度品で作品に共通する優美な世界が演出された空間は圧巻でした!
ひとつひとつの作品にフィットするフォントの選び方や、色へのこだわりが直に伝わってくるのはやはり画面上でなく実際に紙に印刷されたものならでは。校正用紙や、付箋に書かれたメモまで見られる貴重な機会でした。
展覧会を知るまで実は全く馴染みがなかったBUCK-TICK。秋田さんは特に彼らとの仕事が多く、絶対的な美学を共有し、絶対にその軸をぶらさずに、アルバムごとにどんどん新たな世界を創り出しているのが展示からうかがえました。楽曲もこの機会にようやく初めて聴いたのですが、どんなジャンルだろうと彼らが演ずれば全てBUCK-TICKの曲なのだという説得力に自然とねじ伏せられるようでした。アートワークがぴったり彼らの存在に寄り添っているとしか思えません。特に宇野亞喜良さんのイラストが主役のジャケットはものすごい引力で目が離せませんでした。
The Beatles関連書籍、カレンダーも手掛けていた秋田さん。このコーナーは撮影不可だったため、書籍「ビートルズ研究 毒・独・髑・読本 (CDジャーナルムック)」のリンクのみ参考に貼っておきます(GoogleBooks Amazon)が随所にThe Beatles愛が感じられ、まるで紙面の中にいる4人をパーティーに招いて、できる限り丁寧に「おもてなし」をしているかのようなデザインだなあと感じました。きっと本人たちが4人そろってできあがった作品を見たら、「ここにマーサいるじゃん可愛いね」とかニコニコ会話するんじゃないかなぁなんて想像したり。
ちなみに、入場したらまっさきに出迎えてくれたBGMはManicsの「Motorcycle Emptiness」。しかし会場には作品がなかったため、秋田さんがお好きでBGMに選んだ(会場BGMはご本人選曲だそう)のだろうと思っていました。後日調べなおしたところ、秋田さんが雑誌用広告をデザインし、その版が日本では未発売のピクチャーディスクに流用され結果的に海外デビュー作品になった、と…。(ご本人のブログより)なんとも凄いエピソードです。会場で見られなかったのは残念ですが、知れてよかったです。
夏に開催された「EDGE OF ROCKS」展、神保町で開催中の「Oasis Origin+Reconstruction」展、「リヴ・フォーエヴァー」展、と今年は音楽+グラフィックデザイン作品の組み合わせの素晴らしさを味わえる機会が多かったです。あらゆる作品を通していかに音楽とデザインの関係が重要なのかということを強く感じさせられました。
レコードやCDのジャケット、ポスターのデザインは作品の素晴らしさを一瞬で見た人の心に焼き付ける役割を担っています。元々の楽曲の持つ魅力をどう伝えるのか、心を砕いて最善の方法を探り作り出されたアートワークは、楽曲とともに深く見る人にインパクトを与え、深く記憶に残るものになります。
名盤と言われる音楽作品が何十年も語り継がれるのはデザインの力による部分もあるのではないでしょうか。
ロックスターをモチーフに作品を作り、自身がプロデュースしたアルバムのデザインも手がけたアンディ・ウォーホル、クリエイション・レコードの作品を多く手掛けたグラフィックデザイン集団8Vo(オクターヴォ)、ピンク・フロイド等に関わったデザイン集団ヒプノシス(2025年にドキュメンタリー映画も公開になるそうです!)など、ミュージシャンからの羨望を集め伝説的に語られるクリエイターも数多く存在します。
サブスクがすっかりおなじみになったかと思えばレコードやCDへの回帰の動きがあったりする昨今。手元にあるCDのクレジットにどんなアートディレクターの名前があるのかな?なんてじっくり読んで音楽×デザインの素晴らしさを改めて味わいたいです。