お盆休み中に思い切って行ってきました、「ポール・マッカートニー写真展 1963-64~Eyes of the Storm~」。久々の六本木にビクつきながらも、展示がとても素晴らしくて最高のひとときでした。The Beatlesがパリ、アメリカに大旋風を巻き起こした数か月。ポール自ら撮影した写真によって、その日々が鮮やかに追体験できるかのような空間です。メンバーはもちろん、パートナー、肉親、同時代のスター、そしてスタッフの姿も生き生きと切り取られています。

ブライアン・エプスタイン、そしてマル・エヴァンス。
エプスタインについてはご存じの方も多いかと思いますが初期から中期のThe Beatlesを支えたマネージャーです。バンドを初期から支え世界的スターに成長させた偉大な人物。しかし、若くして薬物の過剰摂取で亡くなっており、彼の死の影響でバンド内の調和が崩れ始めたという説もあるようです。近日彼を主役にした映画の公開も迫っているようですが、どの時代をどのように切り取った作品になるのか気になるところです。
一方のマル・エヴァンスはローディ、マネージャーであり友人という存在でしたが後に音楽プロデューサーとしても活動。しかし、プロデュースしていたバンドBadfingerに契約問題が生じ解決に奔走するものの精神的に落ち込み、コミュニケーションの行き違いが重なり警官に銃殺されてしまうという壮絶な最期を遂げます。
私は先日、いつも参考にさせていただいている音時さんのブログでBadfingerを知って興味を持ち彼らについて調べたことがきっかけで一連の悲しいエピソードを知ったばかりだったので、なんとも切ない思いで展覧会の写真を眺めていました。昨年観たドキュメンタリー映画「Get Back」の中でも、彼と気を許し合うメンバーとの関係性がなんだか良いなと思っていたのです。
Xのタイムラインで彼について掘り下げた本についての情報を得たのでこちらにリンクを置いておきます。彼が書き残したThe Beatlesの回顧録と写真がこの本の出版で日の目を見るようですが、これから公開されるメンバー四人それぞれの伝記映画にも内容が反映されるのでしょうか。
書籍『マル・エヴァンズ もうひとつのビートルズ伝説』発売

『マル・エヴァンズ もうひとつのビートルズ伝説』
ケネス・ウォマック 著、松田ようこ 訳
A5判/752頁(予定)/予価5,500円(税込)/9月28日発売予定

ミュージシャン、ソングライターが表舞台で華々しく活躍する陰には必ずそれを支える人々がいます。10代の頃は楽曲の素晴らしさ≒ミュージシャン本人の才能で、プロデューサーなどの「大人たち」は売るための戦略を考えるものだと思い込んでいました。
しかし以前より幅広いジャンルの楽曲を聴くようになると、楽曲が作られた後磨かれていく過程がいかに重要なのかということを感じるようになりました。いくら素晴らしくても原材料だけではおいしく料理として味わえないということですよね。

THE WHOにも初期から彼らを支えたキット・ランバートとクリス・スタンプという重要人物がいます。ライナーノーツなどで名前だけは知っていたのですが、Xのタイムラインでドキュメンタリーが無料公開中という情報を得てさっそく観てみました。
もともと音楽業界出身ではなく映画を作りたかった2人が、バンドをプロデュースすれば映画が作れるじゃないか!という考えから素材になるバンドを探し出して出会ったのがTHE WHOだった。ということも初めて知ることだったので、観ている間はずっと「へぇ~!」の連続でした。作曲家・指揮者だった父を持つキット・ランバートは裕福な家庭出身で知識教養が豊富。一方のクリス・スタンプは労働者階級出身、俳優の兄を持ち映画や文学に親しむ青春時代を送り、ADの仕事など下積みから映画業界に入りそこでキット・ランバートと意気投合したそうです。違う環境で育った2人が意気投合し、若いエネルギッシュなバンドと切磋琢磨して世界的に成功していくとは本当にドラマよりもドラマチックな展開です。
THE WHOの初期においては、この2人が客観的な視点も取り入れてバンドのイメージ確立や集客を図ったようです。特に目立つ観客を「100人の顔」として選ばれしファンに仕立て上げたという手法は2024年の今も通用しそうですね。また、THE WHOのファッションは当時の映像を今見てもとてもかっこいいなという印象を受けます。ピートは自分たちを「イケメンじゃない」と自虐していましたが、全然そんなことないです。全員とても男前でかっこいい!!と大声で叫びたい。
「TOMMY」につながる「A Quick One」の誕生など楽曲への影響も大きかったようです。
しかし2人のマネージャーは制作上のトラブルや金銭問題でバンドとの関係が徐々に悪化し、1975年にバンドとの縁が切れることなります。
特にキット・ランバートは「TOMMY」の映画化における方針にこだわり、大事にソングライターとして育成していたピート・タウンゼントと意見が分かれてしまい、決別への道筋を付けてしまったようです。音楽プロデューサーとして成功を手にしたもののその後ドラッグに起因する不慮の事故で1981年に45歳で亡くなり、バンドとは和解するタイミングがなかったかもしれないと思うと切ないです(クリス・スタンプも2012年に亡くなっていますが映画の中でロジャー、ピートとその後同席している場面があります)。

華やかな世界で活躍するスターは、多くの人の注目を集める特異な存在です。特に60~70年代のロック界においては、必死でミュージシャンを支え続けたスタッフも含め、膨大なエネルギーが渦巻いて気を抜いたらすぐに自分自身が消耗してしまうような環境にあったのかなと思います。
メンバーを支えた陰の立役者に思いを馳せながら楽曲を聴いてみるというのもいいですね。

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