(すでに上映終了した映画の情報となっておりますのでご了承ください)
先日、角川シネマ有楽町にて一週間限定で行われた「オアシス:スーパーソニック」のリバイバル上映を観に行ってきました。現在は終了していますが、このリバイバル上映と同時にblurのライブ&ドキュメンタリー映画もこのシアターで上映していたのでまさにブリットポップ祭り状態!展示スペースにたくさん写真展示があったので上映前はそちらも楽しんできました。

もう9年も前に公開された映画ですが、再結成後の今またスクリーンで観たいと足を運んだファンの方も多かったと思われます。新参ファンの私も、ネットや雑誌の情報の拾い読みだけではとらえきれない初期のストーリーを知りたかったのでとてもいいタイミングで再上映してくださってありがたい限りでした。
この映画は、Oasisのデビュー前夜からネブワース公演ライブまで、いわば「前期」・「初期」のストーリーを時系列に追ったもの。中心となるのはもちろんギャラガー兄弟ですが、初期メンバーの今まで知らなかったエピソードもいろいろとインタビューやニュース映像を追いながら知ることができます。

ケンカが強いことが存在証明のような悪ガキだったリアムがロックに目覚め「地元のダチ」とバンド結成。尖ったナイフ&内向的ギター少年として青春を送ったのち(なぜか)バンドに恐れられるローディとなったノエルを加えてOasisが出来上がっていく序盤の展開は、創作のストーリーよりもワクワクさせられました。アラン・マッギーの元ガールフレンド所属のバンドと同じ練習スタジオで意気投合、予定にないけど無理やりライブハウスで演奏して契約を勝ち取ったエピソードなんてまさにサクセスストーリーの序章にぴったりです。

一方で心をえぐられたシーンも多かったです。
まず、初代ドラマートニー・マッキャロルの解雇までの経緯。テレビ番組のインタビューなどでも辛辣なコメント、それ以外でも活動中に常にメンバーから(主にノエルと推測される)批判を浴び続け、本人が「これはいじめだ」と語っていたそうです。成長し続けるバンドのレベルとそぐわなくなってしまったという理由があったにせよ、非常に見ていて悲しくなりましたし「Live Forever」のMVに対してもしんどいイメージがぬぐえなくなりました。
そして三兄弟と母の家族愛との対比として描かれた父との確執。
本人たちだけが関わるならまだしも第三者が「家族の再会」を演出し、それに伴って起こるであろうトラブルの撮影が画策されたアイルランド公演。90年代という時代のせいか、Oasisをはじめ成功してビッグになったミュージシャンへのあたりが強いイギリスのメディアのためか、見ていて辛いシーンでした。弟を制する兄、本当はよっぽど自分が父を殴ってやりたい気分でいっぱいだったでしょう。父そっくりの顔をしているノエルが一番多く父に殴られたと劇中で語られていましたが、幼い兄弟の写真を思い浮かべて字幕に対して目を覆いたくなるような気持ちになりました。
映画のストーリーが進む中で腑に落ちたというか自分なりの解釈をしたのですが、おそらくノエルは幼いころからの体験やデビューから急スピードでスターになったりしたことで自分が崩壊してしまわない処世術として「鈍感さ」を身に着けていったのではないかと感じました。自分の痛み、他人の痛み、目の前に起きていることが巨大であっても「たいしたことない」とフィルターをかけることで乗り越えてきたというか…。そのやり方の副作用がバンドメンバーへの態度だったりドラッグへの耽溺だったのかなと私は解釈しました。いつでも華やかな世界から転落する危うさをチラチラとのぞかせていて、それがまた当時のOasisを好きにさせる魅力のような気もします。
この映画が切り取っている90年代中盤は、Oasisの人気が膨れ上がり世界中を回るツアーやネブワースの巨大ライブが行われた頃。最も全員がいろんな意味で危なかった(ドラッグの影響でセットリスト混乱、違う曲を同時に演奏してしまったりボロボロ)アメリカツアー中のノエル離脱についても描かれます。すぐ連れ戻されその時かくまってくれた女の子をモデルに「Talk Tonight」という名曲を生んだわけで結果オーライっぽくなっていますが、これもまた大きな副作用、揺り戻しだったのでしょう。
ミキサーかエンジニアの方が語っていたセリフで印象的だったのが、うろ覚えですが「ノエルは歌い出すと普段見せない感情的な面が現れる。その間だけは奴のドアが開いて、純粋無垢な姿になる。歌い終わるとそのドアは閉じて、『F×××Nブタ野郎』とか言われるんだけど。その姿を見るのが好きだ」というようなもの。身近で彼を見てきた人ならではの言葉なんだろうなあと思います。

他、好きなシーンがいくつもあったのでちょっとメモ的に挙げておきます。

・デビュー前のリハーサル映像で、すでにリアムが自分たち兄弟を「カインとアベル」に例えて喋っている
・デビューアルバムのレコーディングはライブのようにうまくいかず、ノエルがアラン・マッギーから酷評されることにびくびくしていたのが意外だった
・ブレイク当初は兄弟並んでイギリスのテレビ局らしき取材を受けていたのでそのシーンが見られた
・来日時、水着ギャルがいっぱいいるプールで8ミリビデオか何かで撮影された映像が最高に調子に乗ってて面白い
・ブラーへの発言ではなく「ドラッグは朝の紅茶」発言での大バッシングがクローズアップされていた。当時そうとう叩かれた模様
・ツアマネの女性が長めに登場してアメリカツアーなどについて語っていて、以前ノエルが「俺たちのツアマネは男じゃ無理。母ちゃんに育てられたから俺らは女性には頭が上がらない」と言っていたのを思い出した
・レコーディングのエピソードでリッジファームが登場。
ボーンヘッドが「あのQUEENもレコーディングしたあのスタジオだ」とコメント。実際始まったらバカ騒ぎに次ぐバカ騒ぎで加入したばかりのアランが若干引いていたとのこと
・「巨大になりすぎたバンドのサポートは自分の手に負えない」とネブワースライブの時期にはもうOasisのスタッフを辞していたスタッフの方が、開演前会場へ向かうヘリに同乗して上から会場を眺めるシーンに感動。

まあこんな感じで映画の最中、「まったくこの人らは!!」と思うシーンももちろんたくさんあったんですが結局観終わる時にはああやっぱりOasisが好きだ、としてやられた感じで席を立ちました。
映像製作のための会社を設立したというニュースもあったことですし、ネブワース以降のドキュメンタリー映画も作られるに違いないと期待しています!

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